2025.12.19
【広報・マーケ担当必見】賢い予算消化アイデア決定版!「余った予算」どう使う?期末の駆け込み施策リスト
「期末までにあと100万円使わないといけない…」そんな嬉しい悲鳴に頭を抱えていませんか?本記事では、単なる浪費に終わらない、広報・マーケティング予算の賢い消化方法を網羅的に解説。BtoB・BtoC別の施策から、チームの足腰を強くするインフラ投資まで、次年度のロケットスタートにつながる「資産型」の投資リストをご紹介します。
年度末が近づくと、経理や上層部から「予算が余っているから、期日までに使い切るように」という指示が飛んでくることがあります。 本来であれば予算内に収めるのが仕事ですが、企業会計の仕組み上、余らせてしまうと「来期の予算を削減される」というリスクがあるため、現場の担当者は「いかに正当に使い切るか」に頭を悩ませることになります。
ここで重要なマインドセットは、「予算消化 = 無駄遣い」という罪悪感を捨てることです。
余った予算は、会社が稼ぎ出した利益の一部。これを意味のないノベルティや豪華な飲み会で消滅させるのではなく、「次年度のスタートダッシュを決めるためのガソリン」に変えることこそが、広報・マーケティング担当者の腕の見せ所です。
結論から言えば、目指すべきは「資産の蓄積」です。 4月1日になった瞬間から効果を発揮してくれる「コンテンツ」「データ」「環境」にお金を変えておくこと。これが最も賢い予算消化のあり方です。
「予算が余ったから、とりあえず何か発注しなきゃ」と焦って業者を探し始めるのは危険です。 そのお金が単なる「浪費」になるか、来期を助ける「投資」になるかは、選定基準を持っているかどうかで決まります。一度立ち止まり、以下の3つの視点で予算の使い道を考えてみましょう。
基準1:【資産性】 - 使い捨てではなく「資産」として社内に残るか?
その施策は、4月1日以降も会社に価値を提供し続けますか? 例えば、一過性のWeb広告は配信停止と同時に効果が消えます(フロー型)。しかし、記事コンテンツやホワイトペーパー、導入事例、顧客リストなどは、一度作れば来期もその次の期も、あなたの代わりに集客を続けてくれます(ストック型)。予算消化こそ、こうした「ストック資産」にお金を使う絶好の機会です。
基準2:【即効性・実現性】 - 3月末(決算)までに納品・検収が間に合うか?
これは経理上の非常に現実的な問題です。 企業の会計ルール上、費用は原則として「納品・検収(役務の提供完了)」が済んだ時点で計上されます。「発注は3月だけど、納品は4月」となると、今期の予算として認められないリスクがあります。確実に年度内に納品完了するメニューか、あるいは「年払い」のように今期計上が可能な契約形態か、実現可能性をシビアに見る必要があります。
基準3:【戦略性】 - 次年度の戦略・KPIに紐づいているか?
「半額だから」という理由だけで、ターゲットのいない媒体に広告を出していませんか? 予算消化の目的は、あくまで「次年度の目標達成」を楽にすることです。来期の課題が「認知不足」なら認知施策を、「リード不足」なら獲得施策を。「安さ」や「手軽さ」ではなく、「来期の戦略」という縦糸が通っているかを確認しましょう。
これら3つの基準をまとめたチェック表が以下です。発注前の確認に確認してみてください。
| 選定基準 | チェックポイント | 判定のヒント |
|---|---|---|
| 資産性 | 一過性の花火ではなく、積み上げ型の資産になるか? |
◯ 良い例:記事、動画、リスト、ツール環境 × 悪い例:一時的な飲み会、戦略なき広告 |
|
即効性 実現性 |
決算月(3月末など)までに納品・検収が可能か? |
◯ 良い例:既存資料のリライト、ツール年払い × 悪い例:大規模な開発、撮影を伴う新規制作 |
| 戦略性 | 次年度の課題解決(KPI)に直結しているか? |
◯ 良い例:来期の注力商品のLP制作 × 悪い例:単に安くなっているだけの広告枠 |
予算消化の鉄則は「資産に変えること」ですが、BtoBとBtoCでは優先すべき資産が異なります。 ここでは、現場で実際に効果が出ている施策を網羅しました。自社の課題や余剰予算の規模に合わせて、最適な組み合わせを選んでください。
【BtoB向け】「信頼」と「商談」を積み上げる施策アイデア
決裁プロセスが長く、論理的な判断が求められるBtoBでは、営業活動を後押しする「コンテンツ」と「Webの受け皿」にお金を変えましょう。
1:Webサイト・LP(リード獲得資産)
- ✅サービス特化型LP(ランディングページ)の制作:
- 本体サイトとは別に、特定の商材やターゲット(例:製造業向け、人事担当者向け)に特化したLPを新規制作します。広告の受け皿としてCVR改善に直結する、確実な投資です。
- ✅採用サイト・オウンドメディアの部分リニューアル:
- 全面リニューアルは期間的に厳しくても、「TOPページのデザイン刷新」や「社員インタビューページの拡充」なら年度内に間に合います。企業の顔を磨き上げましょう。
2:コンテンツ・クリエイティブ(営業資産)
- ✅高品質な導入事例(ケーススタディ)制作:
- 社内リソースでは後回しになりがちな取材・撮影・執筆をプロに一括発注しましょう。質の高い事例は、24時間働く優秀な「セールスパーソン」になります。
- ✅ホワイトペーパー(調査レポート・eBook)制作:
- 独自調査の結果や、過去のウェビナー資料をリライトしてDL資料化します。リード獲得の「餌」を増やす、鉄板の施策です。
- ✅サービス紹介・デモ動画(アニメーション等):
- 無形商材の複雑な仕組みを解説する動画を制作します。Webサイトへの掲載はもちろん、商談時のアイスブレイクにも使える万能ツールです。
3:広告・データベース(集客資産)
- ✅比較サイト・ポータルサイトの年間掲載費:
- 有力なSaaS比較サイトや、BtoBサービスの資料請求プラットフォームの年間プランを一括払いし、来期1年間の安定したリード導線を確保します。
- ✅企業データベース・リスト購入:
- 企業情報データベースのライセンス契約、またはターゲット企業の営業リスト作成ツールの費用に充てます。来期のテレアポやDM送付の精度が劇的に上がります。
- ✅記事広告(タイアップ)の仕込み:
- 業界メディアへの出稿です。掲載自体は来期になっても、契約と入稿(制作)を今期中に行うことで予算処理できる場合があります(※媒体社・経理への確認必須)。
- ✅ハイエンドなDM(ダイレクトメール)制作:
- 決裁者宛に送るための、箱型や特殊加工を施した高価なDMセットを準備・印刷しておきます。開封率の高さは「紙の質」に比例します。
【BtoC向け】「共感」と「接点」を作る施策アイデア
感情やタイミングが購買を左右するBtoCでは、ユーザーの熱量を高める施策や、Web上での「購入体験」をスムーズにする投資が有効です。
4:Web改善・LPO(顧客接点資産)
- ✅LPO(ランディングページ最適化)とヒートマップ分析:
- 既存LPのファーストビュー改修や、ヒートマップツールの導入・分析レポート作成を依頼します。穴の空いたバケツを塞ぐ作業は、広告費を増やすより高コスパです。
- ✅EFO(入力フォーム最適化)ツールの導入:
- カゴ落ちを防ぐためのEFOツール導入や、チャットボットの実装費用です。購入直前の離脱を1%減らすだけで、売上は大きく跳ね上がります。
- ✅スマホサイトのUI/UX専門診断:
- 第三者の専門家によるUI/UX診断を実施し、改善提案レポートをもらいます。来期のサイト改修の設計図として活用できます。
5:インフルエンサー・SNS施策(認知資産)
- ✅インフルエンサー・YouTuberタイアップ(二次利用権購入):
- 単に紹介してもらうだけでなく、「制作された画像や動画を自社の広告やLPで使って良い権利(二次利用権)」ごと買い取ります。プロが撮るよりもリアルで刺さる素材(UGC風素材)を確保できます。
- ✅ARフィルター・オリジナルスタンプ制作:
- InstagramやTikTokで使用できるブランドオリジナルのARフィルターや、LINEスタンプを制作し、ユーザーの投稿(UGC)を誘発します。
6:キャンペーン・販促(短期ブースト)
- ✅デジタルギフト・インスタントウィンシステム導入:
- LINE友だち追加キャンペーンなどで使える抽選システムの契約や、景品(Amazonギフト券等)の予算確保。デジタルギフトは在庫リスクがなく、金額調整もしやすいのが利点です。
【共通・インフラ】組織の足腰を強くする施策アイデア
業態を問わず、マーケティングチームの生産性を上げ、リスクを減らすための「環境」への投資です。
7:サイトインフラ・ツール(環境整備)
- ✅CMS移行・サーバー移転の初期費用:
- 使いにくい更新システム(CMS)の載せ替えや、サーバー増強にかかる費用です。来期の運用コストを下げるための「前払い」として機能します。
- ✅SaaSツールの年払い(MA/CRM/分析ツール):
- 月額契約を年払いに変更し、割引適用を受けつつ予算を消化します。次年度導入予定のツールの初期費用を前倒しで支払うのも手です。
- ✅有料素材サイト・フォントの年間契約:
- 高品質なストックフォトサービスや、有料フォントの年間ライセンス。クリエイティブの質は、素材の質で9割決まります。
8:リサーチ・データ(戦略資産)
- ✅市場調査(ネットリサーチ):
- 認知度調査、NPS調査、競合比較調査など。来期の戦略立案の根拠となる客観的データを購入します。社内稟議を通す際の強力な武器になります。
- ✅セキュリティ診断(脆弱性診断):
- 自社サイトやアプリのセキュリティホールがないか、専門会社に診断を依頼します。
9:機材・スキル(人的資産)
- ✅ハイスペックPC・周辺機器への更新:
- 動画編集やデザインを行うメンバーのPCを最新のものにする、デュアルモニターにするなど。作業効率が上がれば、それは立派な投資対効果を生みます。
- ✅チーム研修・専門書籍・有料セミナー:
- メンバー全員分の専門書籍購入、有料のオンライン学習プラットフォームの法人契約など。
10:来期サイトリニューアルの「分割発注」(調査・設計)
- ✅調査・要件定義・設計フェーズの前倒し発注:
- もし来期に大型のサイトリニューアルを控えているなら、今年度の予算で「リニューアルの設計図」だけを先に発注してしまうのがプロの技です。具体的には、以下のような上流工程を分割発注する方法です。
- 現状分析・競合調査(リサーチ)
- 要件定義(リニューアルの目的・機能の策定)
- サイトマップ・ワイヤーフレーム(設計図)の作成
- これらは「調査レポート」や「要件定義書」という形で、年度内に納品(検収)が可能です。これにより「来期の制作費見積もりが精緻になる(予算オーバーを防ぐ)」「4月からすぐにデザイン制作に入れる」というメリットがあります。「頭金」として今期の予算を使うことで、来期のプロジェクト成功率が格段に上がります。
逆に、以下のような使い方はおすすめしません。これらは「投資」ではなく、真の意味での「浪費」になりがちです。
- ✅ターゲットがいない大量ノベルティ:
- 社名の入ったカレンダー、ボールペン、モバイルバッテリー。もらって嬉しいものなら良いですが、在庫管理のコストだけが残り、結局廃棄処分になるケースが後を絶ちません。
- ✅目的のない「豪華な」宴会費:
- チームビルディングは大切ですが、単に高いお店で飲むだけでは何も残りません。また、税務調査で否認されるリスクもあるため、注意が必要です。
- ✅「安くなるから」という理由だけの長期広告枠:
- 「今ならこの枠が半額です」と言われても、来期の戦略に合致していなければ無駄金です。枠を埋めることが目的化しないようにしましょう。
予算消化という言葉には、どこか事務的な響きがあります。しかし、そのお金は「来年出会うはずのお客様」のために使うべき大切なお金です。
慌てて無駄なものに使ってしまう前に、一度立ち止まって考えてみてください。「これを買うことで、来期のマーケティング活動はどう楽になるか? どう成果が上がるか?」
もし使い道に迷ったら、本記事の予算消化アイディアを参考に、「自社にとって資産になる」且つ「納期の調整がつく」施策を選んでみてください。
コネクティではWeb戦略支援・デジマ支援を行っています。
余った予算の使い道・期末の駆け込み施策にお悩みの方は、
ぜひお気軽にご相談ください。
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Q1. 年度末ギリギリで、制作会社への発注が間に合いません。どうすればいいですか?
- A1. 物理的な納品物を伴わない「ライセンス購入(ツールの年払い)」や「デポジット型の広告費(広告アカウントへの入金)」が検討できます。また、Amazonギフト券を使ったキャンペーン用のインセンティブ購入(在庫化)なども手ですが、これらは税務・経理上のルールが厳しいため、必ず自社の経理担当に事前相談してください。
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Q2. Webサイトのリニューアルをしたいですが、3月末までに完了しません。
- A2. 全面リニューアルは期間的にリスクが高いですが、「要件定義・設計フェーズ」や「デザイン制作費」として、工程の一部を切り出して納品・請求してもらうことが可能な場合があります。また、LP(ランディングページ)単体であれば、1ヶ月〜1.5ヶ月での制作が可能です。制作会社に「3月末納品でできる範囲」を相談してみましょう。
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Q3. 「期越しの納品」は経理上認められますか?
- A3. 原則として、費用は「役務の提供が完了した日」に計上されるため、3月末までに納品・検収が完了している必要があります。ただし、契約内容や企業の会計方針によっては「今期費用」として処理できる例外もあるため、独断で進めずに経理部門と連携を取りましょう。
株式会社コネクティ マーケティングフェロー
大手事業会社におけるマーケティング実務を経てコネクティに参画。エージェンシーの立場から数十社のデジタルマーケティング支援に従事し、Webサイト改善やMA活用などを手掛ける。現在は自社マーケターとして、Web運営、SEO・AIO(AI検索)対策、広告運用までをフルスタックに担当。事業会社と支援会社、双方の実務経験に裏打ちされた「成果に直結するマーケティング戦略」に定評がある。