2025.10.03
RFPとは?目的・書き方をIT初心者向けに徹底解説【サンプル付】
「RFPとは何か?」その疑問に答えます。本記事では、RFP(提案依頼書)の目的、RFIとの違い、基本的な構成要素から具体的な書き方まで、ITに詳しくない方でも分かるようにサンプルを交えて解説。質の高い提案を引き出す秘訣がわかります。
RFP(Request for Proposal)とは、日本語で「提案依頼書」と訳され、企業がシステム開発やWebサイト構築などを外部のITベンダーに依頼する際に、プロジェクトの目的や要望、要件などをまとめて提示する文書のことです。
もしかすると、「専門的で難しい仕様書のようなもの」というイメージをお持ちかもしれません。しかし、RFPの本質はもっとシンプルです。単なる仕様書ではなく、「自社の課題を解決してくれる最適なパートナー(ベンダー)から、質の高い提案をもらうためのコミュニケーションツール」と捉えることが、プロジェクト成功の第一歩です。
良いRFPは、良いベンダーとの出会いを創出し、プロジェクトの成功確率を飛躍的に高めます。
- 認識齟齬の防止:
- 発注側とベンダー側の「やりたいこと」のズレをなくします。
- 公平な比較:
- 各社の提案を同じ土俵で評価し、最適な一社を選べます。
- 社内合意の形成:
- プロジェクトの目的や要件が明確になり、関係者の意思統一が図れます。
この記事では、RFPの基本的な知識から、具体的な書き方、質の高い提案を引き出すためのポイントまで、ITに詳しくない方でも理解できるよう分かりやすく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、貴社のプロジェクト成功にお役立てください。
RFPを作成するには時間も労力もかかります。しかし、その労力をかけてでも作成すべき明確な目的があります。ここでは、RFPがプロジェクト成功に不可欠である3つの理由を掘り下げて解説します。
目的1:発注者とベンダー間の認識齟齬を防ぐ
RFPがないままプロジェクトを進めると、「こんなはずじゃなかった」という事態に陥りがちです。例えば、「使いやすいシステムを」と口頭で伝えただけでは、発注者の思う「使いやすさ」とベンダーが思う「使いやすさ」が全く異なる場合があります。結果として、完成したシステムが現場で全く使われない、といった悲劇も起こりかねません。
RFPは、プロジェクトで実現したいこと、必要な機能、制約条件などを文書として明確に定義するものです。これにより、発注者とベンダーの間に共通の理解が生まれ、認識の齟齬を最小限に抑えることができます。
目的2:公平な基準でベンダーを比較・選定する
複数のベンダーに声をかけた場合、各社から様々な形式の提案書や見積書が提出されます。しかし、前提条件がバラバラでは、どの提案が本当に優れているのかを客観的に比較することは困難です。「A社はデザインが良いが、B社は価格が安い。C社は実績が豊富…」といったように、 apples-to-apples(同じ基準)での比較ができなくなってしまうのです。
RFPを提示することで、全てのベンダーが同じ要件に基づいて提案を行うため、提案内容や見積もりを公平な基準で比較・評価できます。これにより、価格だけでなく、技術力や課題解決能力なども含めて、総合的に最適なパートナーを選定することが可能になります。
目的3:プロジェクトの要求を明確化し、社内合意を形成する
RFPを作成するプロセスは、実は社内向けのメリットも非常に大きいものです。プロジェクトの関係部署(営業、マーケティング、情報システム部など)にヒアリングを行い、様々な要望を一つの文書にまとめていく作業を通じて、プロジェクトの目的や要求仕様が明確になっていきます。
「このプロジェクトは一体何のためにやるのか」「絶対に譲れない要件は何か」といったことが関係者全員で共有され、意思統一が図られます。この社内での合意形成が、プロジェクトをスムーズに推進していく上での強力な土台となります。
RFPと混同されやすい言葉に「RFI」「RFQ」があります。これらはベンダー選定の異なるフェーズで活用されるもので、目的と役割が明確に異なります。それぞれの違いを理解し、適切に使い分けることが重要です。
| 名称 | 正式名称 | 目的 | 実施フェーズ | 主な内容 |
|---|---|---|---|---|
| RFP | Request for Proposal | 具体的な提案を依頼する | ベンダー選定 | 課題、目的、要件、予算、スケジュール など |
| RFI | Request for Information | 製品や企業に関する情報を依頼する | 情報収集・候補選定 | 企業概要、実績、技術力、製品情報など |
| RFQ | Request for Quotation | 見積もりを依頼する | 価格比較 | 詳細な仕様、数量、希望納期など |
一般的には、まずRFIを広く提示してベンダーの情報を収集し、候補を5〜7社程度に絞り込みます。その後、絞り込んだ候補先に対してRFPを提示し、具体的な提案と見積もりを依頼する、という流れで進めるのが最も効率的です。
それでは、実際にRFPを作成する際の基本的な構成要素について見ていきましょう。ここに挙げる9つの項目を網羅することで、ベンダーが必要とする情報を過不足なく伝えることができます。
要素1:プロジェクトの概要
プロジェクトの名称、背景、目的などを簡潔にまとめた、RFPの「顔」となる部分です。誰が読んでも、何に関する提案依頼なのかがすぐに分かるように記述します。
要素2:プロジェクトの背景と目的
なぜこのプロジェクトを行うのか、現状どのような課題があるのかを具体的に記述します。ベンダーがプロジェクトの背景を深く理解することで、より的確な提案が期待できます。
要素3:プロジェクトのゴール・目標(KGI/KPI)
プロジェクトが成功したかどうかを判断するための、具体的な数値目標を設定します。「売上〇%向上」「問い合わせ件数〇件/月」など、可能な限り定量的な目標(KPI)を記載することが重要です。
要素4:提案依頼の範囲(スコープ)
どこからどこまでをベンダーに依頼したいのか、その範囲を明確にします。例えばWebサイト構築であれば、企画、デザイン、開発、インフラ構築、公開後の保守・運用など、依頼範囲を具体的に示します。
要素5:機能要件・非機能要件
プロジェクトで実現したいシステムやWebサイトに必要な機能(機能要件)と、性能やセキュリティなどの品質に関する要件(非機能要件)を記述します。詳細は後述しますが、ここはRFPの核となる重要な部分です。
要素6:予算とスケジュール
プロジェクトにかけられる予算の上限や、希望する納期を提示します。公開希望日から逆算して、提案締切、ベンダー選定、開発、テストといった主要なマイルストーンも示しておくと、より現実的な提案に繋がります。
要素7:提出物と納品形式
プロジェクト完了時に、どのような成果物(ドキュメント、ソースコードなど)を、どのような形式で納品してほしいかを明記します。
要素8:ベンダーの選定基準とプロセス
どのような基準(価格、技術力、実績など)で提案を評価するのか、また、今後の選定プロセス(プレゼンテーションの有無など)を伝えます。透明性を示すことで、ベンダーの信頼を得ることができます。
要素9:契約に関する事項
支払い条件、瑕疵担保責任、知的財産権の帰属など、契約に関する基本的な条件を記載します。
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RFPは、ただ要件を羅列するだけでは不十分です。ベンダーの知恵とクリエイティビティを最大限に引き出し、質の高い提案を得るためには、いくつかの工夫が必要です。
ポイント1:「Why(なぜやるのか)」を明確に伝える
「何を作りたいか(What)」だけでなく、「なぜそれが必要なのか(Why)」というプロジェクトの背景やビジネス上の課題を丁寧に記述しましょう。ベンダーは背景を理解することで、単なる御用聞きではなく、ビジネスパートナーとして本質的な課題解決策を提案してくれます。
【Badな例】
顧客管理システムを導入したい。
【Goodな例】
- 現状の課題:
- 現在の顧客管理はExcelで行っており、手動入力が多く入力ミスや情報共有の遅延が月間20件発生している。これにより、営業機会の損失が年間約500万円に上ると試算されている。
- プロジェクトの目的:
- 顧客情報の一元管理とプロセスの自動化により、業務効率を30%改善し、営業機会損失をゼロにすることを目指す。
ポイント2:実現したい「あるべき姿」を記述し、自由な提案を促す
細かすぎる仕様でガチガチに固めてしまうと、ベンダーの自由な発想を妨げてしまう可能性があります。実現方法(How)を細かく指定するのではなく、「どのような状態になりたいか(ToBe)」というゴールイメージを共有し、そこへの最適なアプローチを提案してもらう姿勢が大切です。
【Badな例】
トップページにAとBとCのボタンをこの順番で配置すること。
【Goodな例】
トップページを訪れたユーザーが、迷うことなく最も重要なコンテンツ(製品情報)に到達できるようなUI/UXを提案してほしい。
ポイント3:評価基準を具体的に示し、公平性を担保する
「何を重視してパートナーを選ぶのか」という評価基準を事前に開示しましょう。これにより、ベンダーは評価ポイントを意識した、的を射た提案を作成しやすくなります。また、選定プロセスの透明性・公平性を示すことにも繋がり、ベンダーとの良好な関係構築の第一歩となります。
【評価項目の例】
以下の基準で総合的に評価し、パートナー企業を選定します。
- 課題解決能力・提案の質:
- (40%)
- 技術力と実現性:
- (20%)
- プロジェクト実績:
- (15%)
- プロジェクト推進体制:
- (15%)
- コストの妥当性:
- (10%)
最後に、RFP作成時によく見られる失敗例と、そうならないための注意点をまとめます。
- 要望を詰め込みすぎる:
- 全ての要望を盛り込もうとすると、予算や納期が現実的でなくなり、どのベンダーからも良い提案が出てこない可能性があります。要件には必ず優先順位(Must/Want)をつけましょう。
- 社内調整が不十分:
- 担当者だけでRFPを作成してしまうと、後から他部署の要望が出てきて、プロジェクトが手戻りになることがあります。作成段階で必ず関係部署を巻き込み、合意形成を図りましょう。
- 専門用語を多用する:
- 社内でしか通じない専門用語や略語を使うと、ベンダーに意図が正しく伝わりません。誰が読んでも理解できる、平易な言葉で記述することを心がけましょう。
- ベンダーに丸投げする:
- RFPは自社の課題と要望を伝えるための文書です。「どうしたら良いか分からないので、良い感じに提案してください」という丸投げは、結局何も伝わらず、質の低い提案しか集まりません。
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本記事では、RFPの基本的な概念から、その目的、具体的な書き方、そして質の高い提案を引き出すためのポイントまでを解説しました。
RFPの作成は、確かに時間と労力がかかる作業です。しかし、この最初のステップを丁寧に行うことが、最終的にプロジェクト全体の成功確率を大きく左右します。RFPは単なる作業ではなく、自社の課題と向き合い、未来のビジネスを構想する重要なプロセスです。
この記事を参考に、ぜひ最適なパートナーと出会い、プロジェクトを成功に導くための「勝てるRFP」を作成してください。
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Q1. RFPはどんな時に必要になりますか?
- A1. 新規システムの導入、大規模なWebサイトリニューアル、基幹システムの刷新など、プロジェクトの規模が大きく、複数のベンダーから提案を受けて比較検討したい場合に特に有効です。逆に、小規模な改修や、依頼先が決まっている場合は、より簡易な要件定義書で十分なこともあります。
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Q2. RFPとRFIはどちらを先に出すべきですか?
- A2. まずRFI(情報提供依頼書)で、プロジェクトに対応できそうなベンダーの情報を広く収集し、候補を5〜7社程度に絞り込みます。その後、絞り込んだ候補先に対してRFP(提案依頼書)を提示し、具体的な提案を依頼するのが最も効率的な進め方です。
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Q3. RFPの作成はどのくらい時間がかかりますか?
- A3. プロジェクトの規模や複雑さ、社内の合意形成の状況によって大きく異なりますが、一般的には1ヶ月〜3ヶ月程度かかることが多いです。特に、関係部署へのヒアリングや要件の整理に時間がかかる傾向があります。十分な時間を確保して、関係者と丁寧に要件を詰めることが成功の鍵です。
株式会社コネクティ マーケティングフェロー
大手事業会社におけるマーケティング実務を経てコネクティに参画。エージェンシーの立場から数十社のデジタルマーケティング支援に従事し、Webサイト改善やMA活用などを手掛ける。現在は自社マーケターとして、Web運営、SEO・AIO(AI検索)対策、広告運用までをフルスタックに担当。事業会社と支援会社、双方の実務経験に裏打ちされた「成果に直結するマーケティング戦略」に定評がある。