2025.11.10
Webサイトリニューアルの進め方【10ステップ】大企業向けプロジェクト管理術と期間設定の秘訣
大企業のWebサイトリニューアルを成功に導く「進め方」を全10ステップで徹底解説。期間の目安から、失敗しないためのプロジェクト管理術、具体的なスケジュール(ガントチャート例)まで、担当者が知るべき全てを網羅。この記事を読めば、複雑な大規模リニューアルの進め方がわかります。
「Webサイトリニューアルのプロジェクト担当者に任命されたが、何から手をつければいいかわからない」 「関係部署が多く、うまくプロジェクトを進められるか不安だ」
大企業のWebサイトリニューアルは、関わる人数、サイトの規模、求められる機能の複雑さから、非常に難易度の高いプロジェクトです。そして、その成否は、いかに体系立ててプロジェクトを「進める」かにかかっています。
しかし、見落とされがちな事実があります。それは、プロジェクトの「制作期間」(数ヶ月〜1年)よりも、公開後の「運用期間」(3〜5年以上)の方が圧倒的に長いという事実です。
ビジネス上の本当の成果(ROI)は、制作期間ではなく、この長期的な運用期間にこそ現れます。したがって、リニューアルの成功とは、プロジェクトの最初の段階で、この長期的な運用・改善をいかに具体的に計画できるかに懸かっています。
この記事では、単なる制作手順に留まらず、長期的な成功(=運用・改善)から逆算した、大企業向けリニューアルの「進め方」全10ステップと、プロジェクト管理の秘訣を詳しく解説します。
リニューアルの全体像(目的、費用、失敗しないためのポイントなど)を把握したい方はこちら
まず、プロジェクトの全体像を把握するために、必要な「期間」の感覚を掴みましょう。
リニューアルの一般的な頻度・間隔
Webサイトリニューアルは、一般的に「3〜5年」に1回と言われることが多いです。技術の進歩(例:スマートフォンの普及)やデザイントレンドの変化、事業戦略の見直しに合わせて実施されます。 ちなみに、日経225構成企業(大企業)を対象とした分析では、リニューアル間隔は「5.5年」に1回というデータもあり、大企業ではより中長期的な視点でサイトが運営されていることがわかります。
サイト規模別の総期間と、詳細な工程別期間の目安
次に、1回のリニューアルにかかる「制作期間」の目安です。
| サイト規模 | ページ数(目安) | 制作期間 |
|---|---|---|
| 小規模サイト | 10ページ以内 | 1〜3ヶ月 |
| 中規模サイト | 10〜50ページ | 3〜6ヶ月 |
| 大規模サイト | 50ページ以上 | 6ヶ月〜1年以上 |
大企業が手掛けるリニューアルは、数百〜数千ページに及ぶことも珍しくなく、計画段階から公開まで含めると1年以上の長期プロジェクトになるケースが多いです。
さらに、プロジェクトの主要な工程ごとの詳細な期間目安は以下の通りです。これらはあくまで一例ですが、計画の解像度を高めるために参考にしてください。
- ✅検討・計画フェーズ:
- ・目的と目標設定:1〜2週間
- ・課題抽出・競合サイト分析:1〜2週間
- ✅制作フェーズ:
- ・サイトマップ制作:2〜4週間
- ・デザイン・コンテンツ制作・コーディング:4~8週間以上(※サイト規模により大きく変動)
リニューアルは計画通りに進まないことも多いため、特に社内の合意形成やコンテンツ準備期間には余裕を持った早めの準備が推奨されます。
なぜ大企業のリニューアルは長期化するのか?
- ✅ステークホルダーの多さ:
- 関係部署(事業部、広報、人事、法務、情報システム部など)が多く、それぞれの合意形成に時間がかかる。
- ✅サイト規模の大きさ:
- 移行すべきコンテンツや実装すべき機能が膨大になる。
- ✅複雑な要件:
- グループ・グローバルサイトの統制、高度なセキュリティ要件、基幹システムとの連携など、技術的に難易度の高い要件が多くなる。
だからこそ、次に解説する体系的な「進め方」が極めて重要になるのです。
ここからは、リニューアルプロジェクトを具体的な10のステップに分解して解説します。 なお、企画を全て内製するか、企画段階からパートナー企業に外注するかによって、RFP(ステップ5)やサイト設計(ステップ6)のタイミングが前後することもありますが、必ず「目的設定」(ステップ1)から始まり、「運用・改善」(ステップ10)で継続するという本質的な流れは共通です。
フェーズ1:戦略・計画フェーズ(1〜3ヶ月)
プロジェクトの方向性を決定づける、最も重要なフェーズです。ここでの準備が不十分だと、後工程で必ず手戻りが発生します。
ステップ1:目的・ゴール(KGI/KPI)の明確化と課題分析
リニューアルの成否は、このステップで9割決まると言っても過言ではありません。
- ✅目的の明確化:
- 「経営課題は何か」という最上位の視点から、「何のためにリニューアルするのか」という目的を定義します。
- ✅ゴール(KGI/KPI)の設定:
- 目的の達成度を測るための具体的な数値目標(KGI/KPI)を設定します。(例:KGI「Web経由の問い合わせ件数」、KPI「問い合わせフォームへのアクセス数」)
- ✅現状分析と課題可視化:
- アクセス解析、ヒートマップ分析、社内ヒアリング、そして競合サイト分析などを行い、「なぜ今、目標を達成できていないのか」という現状の課題を客観的に洗い出します。
ステップ2:公開後の「運用・改善」体制と予算の計画
ここが最大のポイントです。 多くのプロジェクトが「作ること」に集中しすぎて、公開後の運用体制を軽視しがちです。
ビジネス成果(ROI)は長期的な運用期間にこそ現れます。したがって、ステップ1で設定したKPIを「誰が」「どのような体制で」「どれくらいの予算を使って」継続的に測定し、改善していくのかを、この最初の段階で具体的に計画・設計することが不可欠です。
ステップ3:プロジェクト体制の構築
大規模リニューアルを円滑に進めるためには、強力なプロジェクト体制が不可欠です。
- ✅責任者の任命:
- プロジェクト全体の意思決定権を持つ責任者(プロジェクトマネージャー)を明確にします。
- ✅チームメンバーのアサイン:
- 各関連部署から担当者を選出し、役割分担を明確にします。
- ✅定例会議の設定:
- プロジェクトの進捗共有や課題解決のための定例会議を定期的に開催するルールを決めます。
フェーズ2:要件定義・選定フェーズ(2〜3ヶ月)
プロジェクトの具体的な仕様を固め、共にゴールを目指すパートナーを選定します。
ステップ4:要件定義
リニューアル後のサイトに実装したい機能や、満たすべき性能などを具体的に定義し、文書化します。
- ✅機能要件:
- CMSの機能、会員登録機能、検索機能など。
- ✅非機能要件:
- セキュリティレベル、表示速度、対応ブラウザなど。
- ✅コンテンツ要件:
- 既存コンテンツの移行方針(移行、リライト、削除)、新規作成するコンテンツの概要。
ステップ5:RFP作成とパートナー選定
要件定義書を基に、制作会社への提案依頼書(RFP)を作成します。RFPには、プロジェクトの背景、目的、要件、予算、スケジュールなどを記載し、複数の会社に同じ条件で提案を依頼します。
提案内容を比較検討する際は、価格だけでなく以下の点も重視しましょう。
- ✅自社のビジネスや課題への理解度
- ✅大規模プロジェクトの実績
- ✅戦略的な提案力
- ✅公開後の運用サポート体制(特に重要)
質の高い提案を引き出すRFP(提案依頼書)の具体的な書き方やテンプレートはこちら
フェーズ3:設計・開発フェーズ(3〜6ヶ月以上)
いよいよWebサイトを具体的に形にしていく工程です。
ステップ6:サイト構造・情報設計
ユーザーが目的の情報に迷わずたどり着けるように、サイト全体の構造(サイトマップ)やナビゲーションを設計します。
ステップ7:デザイン(ワイヤーフレーム作成)
まず、ページの骨格となるレイアウト設計図(ワイヤーフレーム)を作成し、コンテンツの配置や導線を確定させます。ワイヤーフレームの合意が取れたら、ブランドイメージを反映した具体的なビジュアルデザインを作成します。
ステップ8:開発・実装・コンテンツ移行
確定したデザインと設計に基づき、プログラミング(コーディング)やCMSの構築を行います。並行して、既存サイトからのコンテンツ移行や、新規コンテンツの作成を進めます。
フェーズ4:公開・運用フェーズ
リニューアルの最終仕上げと、長期的な運用のスタートです。
ステップ9:テスト・公開前チェック
公開前に、本番環境に近いテスト環境で入念なチェックを行います。
- ✅表示確認、動作確認、リンク切れチェック
- ✅301リダイレクト確認(SEO上、極めて重要)
ステップ10:公開と効果測定、改善サイクルの実行
全てのチェックが完了したら、サイトを公開します。 しかし、公開はゴールではなく、ようやく「スタートライン」に立ったに過ぎません。
ここで、ステップ2で計画した「運用・改善」体制が真価を発揮します。設定したKPIを定期的に観測し、データに基づいて仮説検証を繰り返すPDCAサイクルを実行し、継続的にサイトを改善していきます。
上記のステップを着実に進める上で、特に大企業が意識すべきプロジェクト管理のコツを3つ紹介します。
コツ1:多数のステークホルダーとの円滑な合意形成
関係者が多いプロジェクトでは、各段階での「合意形成」が成功の鍵です。
- ✅キックオフで目的を共有:
- プロジェクト開始時に全関係者を集め、リニューアルの目的とゴール(特にステップ1、2で決めた内容)を共有し、全員が同じ方向を向く意識を醸成します。
- ✅意思決定プロセスを明確化:
- 「誰が」「何を」「いつまでに」決めるのか、というルールを事前に明確にしておきます。
コツ2:タスクの可視化と進捗共有(ガントチャート活用)
長期にわたるプロジェクトでは、「誰が」「何を」「いつまでに行うのか」が曖昧になりがちです。ガントチャートなどのプロジェクト管理ツールを活用し、全てのタスクとスケジュールを可視化しましょう。
コツ3:外部パートナーとの効果的なコミュニケーション
制作会社は単なる「業者」ではなく、共にゴールを目指す「パートナー」です。
- ✅丸投げにしない:
- 制作会社に任せきりにせず、自社の事業や顧客に関する情報は積極的に提供しましょう。
- ✅窓口を一本化する:
- 社内の様々な要望は、プロジェクトマネージャーが取りまとめてからパートナーに伝えるようにし、指示系統の混乱を防ぎます。
- ✅定例会議を設ける:
- 定期的に顔を合わせて進捗を確認し、課題や懸念点を早期に共有する場を設けましょう。
本記事では、大企業のWebサイトリニューアルを成功させるための「進め方」について、具体的な10ステップと管理のコツを解説しました。
リニューアルは、行き当たりばったりで進めると必ず失敗します。特にステークホルダーが多く、要件が複雑化しやすい大企業のプロジェクトにおいては、計画的で体系的なアプローチが不可欠です。
そして何よりも重要なのは、「制作期間」よりも「運用期間」の方が圧倒的に長く、ビジネス上の成果(ROI)はその運用期間にこそ現れるという事実です。
今回のリニューアルプロジェクトの成功は、公開後のサイトをいかに継続的に改善し、育てていけるかにかかっています。そのための体制と予算をプロジェクトの初期段階で計画し、実行し続けることが、リニューアルを真の成功に導く唯一の道です。
「リニューアルの進め方やプロジェクト管理に不安がある」「専門家の視点からアドバイスが欲しい」など、
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Q1. プロジェクトがスケジュール通りに進まない一番の原因は何ですか?
- A1. 大規模リニューアルで最も多い遅延の原因は、「社内での確認・承認プロセスの遅れ」と「コンテンツ(原稿や写真素材)の準備の遅れ」です。特に、複数の部署や役員の承認が必要な場合、想定以上に時間がかかることがあります。対策として、事前に承認フローと各承認者のスケジュールを確保しておくこと、コンテンツの準備はプロジェクトの早い段階から計画的に着手することが重要です。
Q2. プロジェクトチームにはどのようなメンバーが必要ですか?
- A2. プロジェクトを円滑に進めるためには、まず全体の意思決定を行う「プロジェクト責任者」が不可欠です。その上で、各関連部署(事業部、マーケティング、広報、情報システムなど)から、実務的な調整や確認作業を行える「担当者」をアサインする必要があります。外部の制作会社とのやり取りを行うメインの担当者も決めておきましょう。
Q3. 社内の様々な部署から出る要望を、どうやってまとめれば良いですか?
- A3. まず、プロジェクトの初期段階で設定した「リニューアルの目的とゴール(KPI)」に立ち返ることが重要です。各部署からの要望が、その目的達成にどう貢献するのかという視点で優先順位を付け、取捨選択を行います。全ての要望を盛り込むことは不可能なため、目的達成への貢献度が低い要望については、丁寧に関係者へ説明し、理解を求めるプロセスが不可欠です。
Q4. 制作会社に依頼する前に、社内でどこまで決めておくべきですか?
- A4. 制作会社に相談する前に、少なくとも「ステップ1: 目的とゴール、課題」と「ステップ2: 運用体制のイメージ」は社内で議論し、ある程度の方向性を固めておくことが理想です。目的が明確であるほど、制作会社からより具体的で質の高い提案を引き出すことができます。予算感や希望の公開時期も決まっていると、よりスムーズに話が進みます。
Q5. 公開を急いでいる場合、短縮できる工程はありますか?
- A5. プロジェクトの品質を担保するため、基本的にはどの工程も省略すべきではありません。しかし、どうしても納期を優先する必要がある場合は、リニューアルの範囲を限定する「フェーズ分け」を検討します。例えば、フェーズ1では最低限必要なページの刷新のみを行い、追加機能やコンテンツ拡充はフェーズ2として公開後に行う、といったアプローチです。これにより、主要な課題を迅速に解決しつつ、リスクを分散させることができます。
株式会社コネクティ マーケティングフェロー
大手事業会社におけるマーケティング実務を経てコネクティに参画。エージェンシーの立場から数十社のデジタルマーケティング支援に従事し、Webサイト改善やMA活用などを手掛ける。現在は自社マーケターとして、Web運営、SEO・AIO(AI検索)対策、広告運用までをフルスタックに担当。事業会社と支援会社、双方の実務経験に裏打ちされた「成果に直結するマーケティング戦略」に定評がある。