2025.11.10
Webサイトリニューアルの費用相場|大企業の料金内訳とコスト削減のポイントを専門家が解説
Webサイトリニューアルの費用相場をサイト規模・目的別に徹底解説。見積書の見方から、ディレクション費、デザイン費、CMS導入費などの詳細な料金内訳、コストを抑える3つのポイントまで網羅。大企業の担当者が知るべき予算策定の全てがわかります。
Webサイトリニューアルを検討する際、担当者が最も気になるのが「費用」ではないでしょうか。「一体いくらかかるのか?」「現在の見積もりは適正なのか?」といった疑問は尽きません。
重要なのは、費用を単なるコストとして捉えるのではなく、事業成長のための投資対効果(ROI)という視点を持つことです。単に費用を安く抑えることだけを考えると、本来の目的を達成できない「安物買いの銭失い」になりかねません。
この記事では、サイト規模別の費用相場から詳細な見積もりの内訳、そして大企業が賢くコストを管理するためのポイントまで、専門家が徹底的に解説します。
Webサイトリニューアルの費用は、数十万円から数千万円以上と非常に幅広いです。その費用を決定する最大の要因は、単純なページ数だけではありません。
むしろ、「ECや採用サイトのような高機能なシステム開発」が必要か、あるいは「SEOやブランディングなどの戦略コンサルティング」を含むか、といった「機能要件」と「戦略的目的」によって大きく変動します。
目的・規模別のリニューアル費用相場
以下の表は、リニューアルの規模と特徴に応じた費用相場の目安をまとめたものです。
| リニューアルの規模・特徴 | 想定ページ数 | 費用相場(目安) |
|---|---|---|
| デザインのみの変更・部分的改修 | ― | 10万円~50万円 |
| 小規模サイト(CMS乗り換え) | 約10ページ | 50万円~100万円 |
| 中規模コーポレートサイト(オリジナルデザイン) | 30〜50ページ | 150万~300万円 |
| 大規模サイト(集客・ブランディング強化) | 100ページ以上 | 300万円~500万円以上 |
| 高機能サイト(EC、採用、システム連携) | ― | 500万円~1,000万円以上 |
ご覧の通り、大企業のリニューアルは「大規模サイト」や「高機能サイト」に該当するケースがほとんどです。特に、基幹システムとの連携や、高度なCMSカスタマイズ、グローバル展開などを伴う場合は、数千万円規模のプロジェクトになることも珍しくありません。
高額なリニューアルに含まれるものとは?
高額なリニューアルは、単なるWebページ制作(デザインとコーディング)だけではありません。その費用には、以下のような高度な専門作業が含まれています。
- ✅システム開発:
- EC機能、採用管理機能、多言語対応、基幹システム連携、エンタープライズ向けCMSの高度なカスタマイズなど。
- ✅戦略コンサルティング:
- 詳細なアクセス解析、競合分析、SEO戦略、ブランディング戦略、コンテンツマーケティング戦略の策定など。
次に、制作会社から提示される見積書がどのような項目で構成されているのか、その内訳を詳しく見ていきましょう。各項目の役割を理解することで、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
内訳1:ディレクション費(プロジェクト管理費用)
プロジェクト全体の進行管理や品質管理、関係者との調整などを行うプロジェクトマネージャーやWebディレクターの人件費です。総額の10%〜30%が目安となります。大規模で複雑なプロジェクトほど、この割合は高くなる傾向にあります。
内訳2:サイト設計費(情報設計・ワイヤーフレーム作成費)
ユーザーが使いやすいサイト構造を定義する情報設計(IA)や、ページのレイアウト設計図であるワイヤーフレームの作成にかかる費用です。相場は20万円前後からですが、サイトの規模や複雑さによって変動します。
内訳3:デザイン費(ページ単価の目安)
Webサイトのビジュアルデザインを作成する費用です。ページ単位で積算されることもあり、一般的な単価の目安は以下の通りです。
- ✅トップページ:
- 5万円〜16万円
- ✅下層ページ(1ページあたり):
- 2万円〜7万円
- ✅ランディングページ(LP):
- 10万円〜25万円
サイト全体のデザイン費としては15万円〜30万円が一般的ですが、ページ数が多い大規模サイトでは100万円を超えることもあります。
内訳4:コーディング費
確定したデザインを、ブラウザで正しく表示されるようにHTMLやCSS、JavaScriptといった言語でプログラミングしていく作業の費用です。こちらもページ数やデザインの複雑さによって変動し、1ページあたり8,000円〜50,000円ほどが目安です。
内訳5:CMS導入・構築費
WordPressなどのオープンソースCMSや、商用のエンタープライズ向けCMSを導入し、サイトに合わせて構築・カスタマイズする費用です。CMSのライセンス費用や、実装する機能の複雑さによって費用は大きく変動します。
内訳6:動作確認・バグ修正費
公開前に、サイトが設計通りに動作するかをテスト・検収し、問題点(バグ)を修正するためにかかる費用です。プロジェクトの規模や機能の複雑さに応じて計上されます。
内訳7:コンテンツ制作費
サイトに掲載するテキスト(原稿)のライティングや、写真・動画の撮影、図版やイラストの作成などにかかる費用です。コンテンツの量と質に比例して費用は変動します。
内訳8:運用・保守費
サイト公開後のサーバー・ドメイン管理、セキュリティアップデート、軽微な修正対応などにかかる費用です。月額5,000円〜数万円が相場ですが、サポート範囲によって異なります。
前述の通り、費用は目的や機能要件によって変動しますが、特に大企業の費用が高額になる背景には、中小企業とは異なる特有の要件が存在します。
要因1:サイトのページ数とテンプレート数
単純にページ数が多ければ多いほど、デザインやコーディング、コンテンツ移行の工数が増え、費用は高くなります。
要因2:CMSの選定(オープンソースか商用か)
WordPressのようなオープンソースCMSは初期費用を抑えられますが、セキュリティやサポート面に不安が残ります。一方、大企業向けの商用CMS(エンタープライズCMS)は、高度なセキュリティとガバナンス機能、手厚いサポートを提供しますが、その分ライセンス費用や導入費用が高額になります。
要因3:多言語対応・複数サイト管理の要件
グローバルサイトの多言語対応や、グループ会社・ブランドサイトなど数十〜数百のサイトを一元管理する機能は、特殊な設計と開発が必要となり、費用を押し上げる大きな要因です。
要因4:基幹システムや外部ツールとの連携開発
販売管理システムや顧客管理システム(CRM)、マーケティングオートメーション(MA)ツールなど、既存の社内システムとWebサイトを連携させる場合、追加の「システム開発」費用が発生します。
要因5:セキュリティ要件のレベル
個人情報や決済情報を扱うサイトでは、WAF(Web Application Firewall)の導入や定期的な脆弱性診断など、高度なセキュリティ対策が求められ、これが費用に反映されます。
費用を適切に管理し、投資対効果を最大化するためには、以下の3つのポイントを意識することが重要です。
ポイント1:RFPで要件を明確にし、正確な見積もりを取得する
RFP(提案依頼書)を作成し、リニューアルの目的や必要な要件(特に「機能要件」や「戦略的目的」)を文書化することで、制作会社から精度の高い見積もりを引き出すことができます。各社の提案を公平に比較検討でき、「後から追加費用が発生する」といったトラブルも防げます。
最適なパートナーを選ぶためのRFP(提案依頼書)の書き方についてはこちら
ポイント2:既存コンテンツを棚卸しし、資産を最大限活用する
リニューアル時に全てのコンテンツを新規作成する必要はありません。既存サイトのコンテンツを棚卸しし、アクセス数が多い良質な記事や流用できる画像・テキストなどを整理することで、コンテンツ制作費を大幅に削減できます。
ポイント3:TCO(総所有コスト)で判断する
初期費用(イニシャルコスト)の安さだけで判断するのは危険です。サイト公開後の運用・保守費用(ランニングコスト)も含めたTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)で比較検討しましょう。例えば、初期費用が安くても運用に手間がかかるシステムより、初期費用は高くても効率的に運用できるCMSの方が、長期的にはコストを抑えられる場合があります。
Webサイトリニューアルの費用は、まさに「ピンからキリまで」です。重要なのは、自社がリニューアルによって「何を実現したいのか」という目的(戦略的目的・機能要件)を明確にし、それに見合った適切な予算を計画することです。
本記事で解説した費用相場や内訳を参考に、自社のプロジェクトに必要な費用感を把握し、信頼できるパートナーと共に費用対効果の高いリニューアルを実現してください。
「自社のリニューアルに最適な費用感が知りたい」
「複数の見積もりを比較しているが妥当性がわからない」など、
費用に関するご相談は、お気軽にこちらからお問い合わせください。
Webサイトリニューアルの全体像(目的設定や進め方)についてはこちら
Q1. 見積もりが複数社で大きく違うのはなぜですか?
- A1. 見積額の差は、主に人件費(プロジェクト体制の厚さ)、提案される技術やデザインの品質、そして「戦略コンサルティング」や「高度なシステム開発」の範囲の違いから生じます。安価な見積もりは、制作作業(デザイン、コーディング)のみを対象としている可能性があります。価格だけでなく、自社の目的(機能要件、戦略的目的)を達成するために必要な作業が全て含まれているかを総合的に評価することが重要です。
Q2. 見積もりを取る際に、制作会社に何を伝えれば良いですか?
- A2. 正確な見積もりを得るためには、少なくとも「リニューアルの目的」「現状の課題」「おおよそのページ数」「実装したい主な機能」「予算感」「希望納期」を伝えることが重要です。これらの情報をRFP(提案依頼書)として文書にまとめて提示すると、より具体的で精度の高い提案と見積もりを引き出すことができます。
Q3. 相見積もりは、何社くらいに依頼するのが適切ですか?
- A3. 一般的には3〜5社程度に依頼するのが適切とされています。多すぎると各社とのやり取りや提案の比較検討に時間がかかりすぎてしまい、担当者の負担が大きくなります。一方で、少なすぎると比較が不十分になる可能性があります。自社の要件に合いそうな実績を持つ会社を事前にリサーチし、候補を絞り込んでから依頼すると効率的です。
Q4. 初期費用の他に、どのような費用がかかりますか?
- A4. Webサイト公開後には、主に「運用・保守費用」が継続的に発生します。具体的には、サーバーやドメインの維持費、CMSのライセンス費用(商用の場合)、セキュリティアップデート、軽微な修正作業などが含まれます。また、リニューアル後にSEO対策やWeb広告、コンテンツマーケティングなどを行う場合は、別途そのための費用が必要になります。
Q5. 公開後にかかる「運用・保守費」には、具体的に何が含まれますか?
- A5. 運用・保守費の内容は契約によって様々ですが、一般的にはサーバーやドメインの管理費用、CMSのバージョンアップやセキュリティパッチの適用、データのバックアップ、軽微なテキスト修正や画像差し替えなどが含まれます。アクセス解析レポートの提出や改善提案といったコンサルティング業務を含む場合は、費用は高くなります。契約前にサポート範囲を詳細に確認することが不可欠です。
株式会社コネクティ マーケティングフェロー
大手事業会社におけるマーケティング実務を経てコネクティに参画。エージェンシーの立場から数十社のデジタルマーケティング支援に従事し、Webサイト改善やMA活用などを手掛ける。現在は自社マーケターとして、Web運営、SEO・AIO(AI検索)対策、広告運用までをフルスタックに担当。事業会社と支援会社、双方の実務経験に裏打ちされた「成果に直結するマーケティング戦略」に定評がある。