2025.11.10
成果を出すWebサイトリニューアルのデザインとは?大企業に学ぶBtoB成功事例5選
BtoBサイトのデザインで失敗しないための要点を解説。ビジネス成果に不可欠な3つの要素(信頼性の担保、2つのペルソナへのUX、コンバージョン導線)と、サイトの目的別戦略、大企業の成功事例5選を具体的に紹介します。
「Webサイトのデザインが古くなったから、新しくしたい」 これは、Webサイトリニューアルを検討する最も一般的なきっかけの一つです。しかし、目的が「見た目を新しくすること」だけでは、リニューアルは失敗に終わる可能性が高いと言わざるを得ません。
BtoB企業、特に大企業のWebサイトにおけるデザインの役割は、単に見た目を飾ることではありません。それは、企業のブランド価値を伝え、顧客に快適な体験を提供し、最終的にビジネス上の成果(問い合わせ、資料請求など)に繋げるための戦略的な手段です。
この記事では、単なる見た目の刷新で終わらない、「成果を出す」ためのWebサイトデザインの要点と、それを体現しているコネクティの導入成功事例を具体的に解説します。
成果に繋がるBtoBサイトのデザインは、トレンドを追うことよりも、以下の3つのビジネス成果に直結する要素を満たすことが重要です。
要素1:「信頼性(Trust)」の徹底的な担保
BtoBの取引では、顧客は「本当にこの会社に発注して大丈夫か?」という視点でサイトを見ています。したがって、デザインは「信用してもらう情報」を明確に提示し、信頼性を担保することが何よりも重要です。
- ✅一貫したブランドイメージ:
- 配色、フォント、写真のトーン&マナーを統一し、プロフェッショナルな印象を与えます。
- ✅「信頼」のための必須コンテンツ:
- 以下の情報を、アクセスしやすい場所に明記することが不可欠です。
- 詳細な会社概要: 所在地、設立年、資本金、役員構成など。
- 導入実績・制作実績: 「どの企業が使っているのか」は最強の信頼材料です。
- 代表者や社員の顔写真: 責任者の顔が見えることは、ユーザーに安心感を与え、その後の商談を有利に進める効果があります。
要素2:UX/UIの最適化(「担当者」と「決裁者」2つのユーザー視点)
BtoBサイトのUX(ユーザー体験)設計で最も重要なのは、「サイト閲覧者(担当者)」と「最終決裁者(上司)」という2つの異なるペルソナを同時に満足させることです。
- ✅サイト閲覧者(担当者)の視点:
-
- 目的: 導入のための情報収集、製品・サービスの比較検討。
- 必要な情報: 詳細な仕様、ノウハウ、具体的な機能、価格表など、「深く専門的な情報」。
- ✅最終決裁者(上司)の視点:
-
- 目的: 導入の最終判断(リスクはないか、リターンはあるか)。
- 必要な情報: 信頼性、導入実績、導入効果、会社概要など、「簡潔で信頼できる情報」。
優れたBtoBデザインは、担当者向けの詳細な情報を提供しつつ、決裁者向けの簡潔な情報(導入実績ページなど)にも素早くアクセスできる構造になっています。 さらに、担当者が決裁者を説得するプロセスを助けるために、情報を「共有しやすい」機能(例:資料請求ボタン、PDFダウンロード機能)を設けることが、UX設計上非常に重要です。
要素3:コンバージョンへの戦略的導線設計
BtoBの検討プロセスは、BtoCと比べて長くなる傾向があります。ユーザーがどのページを読み、どのタイミングで「問い合わせよう」と決意するか予測が困難です。
そのため、BtoBサイトの導線設計における基本原則は、「原則として全ページにCTA(行動喚起)を設置する」ことです。
- ✅CTA(Call to Action)ボタン:
- 「お問い合わせはこちら」「無料で資料をダウンロード」といった行動喚起ボタンを、ページの下部や追従ヘッダーなど、常に分かりやすい位置に配置します。
- ✅フォームの最適化(EFO:Entry Form Optimization):
- 入力項目を最小限にするなど、ユーザーの負担を減らす工夫をします。
ユーザーが検討を終えた瞬間に、すぐに次のアクション(コンバージョン)に移れるようにしておくことが、ビジネスチャンスを逃さない鍵となります。
成果を出すデザインは、感覚だけでなく、論理的なプロセスを経て生み出されます。
プロセス1:目的とターゲットの明確化
「誰に(担当者か?決裁者か?)」「何を伝え」「どう行動してほしいのか」を定義します。
プロセス2:ワイヤーフレームによる情報設計
デザインの前に、まずページの骨格となるレイアウト(情報配置)を固めます。
プロセス3:トンマナ(トーン&マナー)の策定
サイト全体でブランドイメージを保つため、ブランドイメージに沿った配色やフォントのルールを決定します。
プロセス4:ファーストビューの最適化
ユーザーがページを開いて最初に目にする画面で、事業内容と価値が一目で伝わる構成にします。
BtoBサイトといっても、その「目的」によって、デザインとSEOのどちらを優先すべきかが根本的に異なります。
(A) コーポレートサイトの場合(信頼性・ブランディング優先)
- ✅サイトの目的:
- 既に企業名を知っている訪問者(顧客、株主、求職者)に対し、「信頼性を担保」し、ブランディングを行うこと。
- ✅デザイン戦略:
- この場合、SEO対策(新規流入)よりも、要素1で述べた「信頼してもらう情報」(会社概要、実績、役員情報など)をいかに分かりやすく提示するかが最優先されます。SEO対策は最低限でよい、という判断もあり得ます。
(B) サービスサイト・オウンドメディアの場合(SEO・リード獲得優先)
- ✅サイトの目的:
- まだ企業名を知らない潜在顧客に対し、「新規リード(見込み客)を獲得」すること。
- ✅デザイン戦略:
- この場合は、SEO対策(検索エンジンからの集客)が最優先事項となります。デザインは、SEOで集客したユーザーをいかに効率的にコンバージョン(資料請求や問い合わせ)に導くか、という観点で設計されます。
デザインは、見た目の美しさだけでなく、企業の抱える課題を解決するための戦略的なソリューションです。ここでは、私たちコネクティがご支援した導入事例の中から、具体的な課題解決とデザインが結びついた成功事例を5つのタイプに分けてご紹介します。
事例1:複数サイトの統合による、グループ全体のブランド価値向上デザイン(DCM株式会社様)
- ✅課題:
- グループ会社ごとにWebサイトが乱立し、ブランドイメージが不統一。情報が分散し、運用も非効率になっている。
- ✅解決のデザイン:
- DCM株式会社様は、5つのグループ会社のサイトを統合し、全国で統一した情報発信ができるプラットフォームを構築しました。デザイン面では、白を基調としたクリーンなレイアウトに、DCM様のブランドカラーであるグリーンとオレンジをアクセントとして使用。これにより、個々の店舗ブランドの認知度を保ちつつ、「DCMグループ」としての一貫した信頼感と統一感をユーザーに与えることに成功しています。
事例2:グローバルサイトの一元管理による、世界基準の情報発信デザイン(DIC株式会社様)
- ✅課題:
- 国や地域ごとにサイトが独立しており、情報更新のタイムラグやデザインの不統一が発生。グローバルでのメッセージ発信に一貫性がない。
- ✅解決のデザイン:
- 世界60以上の国と地域で事業を展開する化学メーカー、DIC株式会社様は、グローバルサイトの基盤に当社のCMSを導入。デザインは、グローバル共通のナビゲーションやコンポーネントを採用し、どの国のサイトを訪れてもユーザーが同じ体験ができるよう設計されています。シンプルで普遍的なデザインシステムを構築することで、世界中のユーザーに「DIC」という一つのブランドを的確に伝えています。
事例3:Webガバナンス強化を実現する、大規模サイトの情報整理デザイン(株式会社寺岡精工様)
- ✅課題:
- 事業部や製品ラインが多岐にわたり、サイト構造が複雑化。ユーザーが必要な情報にたどり着けず、更新ルールもバラバラで統制が取れていない。
- ✅解決のデザイン:
- グローバルに事業展開する株式会社寺岡精工様は、多岐にわたる製品情報を事業分野ごとに整理。各分野でデザインのトーンを統一しつつ、製品写真や導入事例を豊富に掲載することで、ユーザーが直感的に情報を探せるよう工夫されています。整然とした情報設計と、テンプレート化されたデザインは、ユーザーの利便性を高めるだけでなく、Webガバナンス強化にも寄与しています。
事例4:顧客接点を強化する、デジタルマーケティング推進デザイン(株式会社パリミキホールディングス様)
- ✅課題:
- Webサイトが単なる情報掲載の場に留まり、見込み顧客の獲得や育成に繋がっていない。MAツールなどとの連携もできていない。
- ✅解決のデザイン:
- 株式会社パリミキホールディングス様は、5つのブランドサイトを一括運用し、顧客との接点を強化するデザインを採用。各ブランドの世界観を表現しつつ、「店舗検索」や「商品情報」といったユーザーが求める情報への導線を分かりやすく設計しています。ユーザーのアクションを促すことを意識した情報配置とデザインが、デジタルマーケティングの推進を強力にサポートしています。
事例5:リブランディングを体現する、企業イメージ刷新デザイン(セゾン投信株式会社様)
- ✅課題:
- 企業の理念や方針が新しくなったが、Webサイトのデザインが古いままで、新しいブランドイメージが顧客に伝わっていない。
- ✅解決のデザイン:
- セゾン投信株式会社様は、リブランディングに伴いWebサイトを刷新。「長期的な資産形成をサポートする」という企業の姿勢を、安心感と信頼感が伝わるデザインで表現しています。温かみのあるイラストや、ゆったりとした余白を活かしたレイアウトは、投資の専門的で硬いイメージを和らげ、顧客に寄り添う親しみやすい企業イメージを醸成しています。
Webサイトリニューアルにおけるデザインは、単なる「お化粧」ではありません。企業のブランド価値を高め(特にBtoBでは「信頼性」)、ユーザー(「担当者」と「決裁者」)の課題を解決し、ビジネス目標を達成するための、緻密な戦略に基づいたソリューションです。
今回ご紹介した成功事例に共通しているのは、いずれも「誰に、何を伝えたいか」が明確であり、その目的を達成するためにデザインが機能している点です。貴社のリニューアルプロジェクトにおいても、まずは目的とターゲットを明確にすることから始めてみてはいかがでしょうか。
貴社のブランド価値を最大化し、ビジネス成果に繋げるWebサイトデザインをご提案します。
リニューアルをご検討中なら、ぜひ一度ご相談ください。
Webサイトリニューアルの全体像(目的設定や進め方)についてはこちら
Q1. Webデザインのトレンドは追うべきですか?
- A1. トレンドを意識することは重要ですが、すべてを追う必要はありません。特にBtoBサイトでは、トレンドよりも「ビジネス成果(コンバージョン)」や「信頼性の担保」が優先されるべきです。そのトレンドが自社のブランドイメージや「担当者」「決裁者」というターゲットユーザーに合っているか、ユーザビリティを損なわないか、という視点で選択的に取り入れることが賢明です。
Q2. BtoBサイトのデザインで最も重要なことは何ですか?
- A2. 「信頼性」と「分かりやすさ」です。BtoBでは、取引相手として信頼できるかどうかが非常に重要です。デザインを通じて、企業の専門性や誠実な姿勢を伝えることが求められます。また、製品やサービスが複雑な場合が多いため、ユーザーが必要な情報に迷わずたどり着ける、分かりやすい情報設計とナビゲーションが不可欠です。
Q3. デザインの良し悪しを、どのように客観的に判断すれば良いですか?
- A3. 個人の主観的な「好き嫌い」で判断するのではなく、プロジェクトの初期段階で設定した「目的」と「ターゲット」に立ち返ることが重要です。「このデザインは、決裁者に信頼性を伝えられるか?」「担当者が必要な詳細情報にたどり着けるか?」「担当者が決裁者に共有しやすいか?」といったように、BtoB特有のターゲットの目的達成に貢献しているかどうかを基準に評価しましょう。
Q4. 事例のようなオシャレな写真素材がありません。どうすれば良いですか?
- A4. 必ずしもスタイリッシュな写真が必要なわけではありません。BtoBサイトでは、働く社員の真剣な表情や、実際の製品が使われている現場、整理されたオフィスの様子など、「リアル」な写真の方が信頼感に繋がるケースも多くあります 。無理にイメージ写真を使うよりも、自社の実態が誠実に伝わる写真を用意することをお勧めします。プロのカメラマンに撮影を依頼するのも有効な投資です。
Q5. 社内でデザインに関する意見がまとまりません。どうすれば良いですか?
- A5. デザインに関する意見の対立は、多くの場合、判断基準が個人の主観になっていることが原因です。まずは、Q3で述べたように「プロジェクトの目的」と「ターゲット(担当者/決裁者)」を共通の判断基準として再確認しましょう。その上で、本記事で解説した「サイトの目的(コーポレートサイトか、サービスサイトか)」に立ち返り、「信頼性」と「SEO(リード獲得)」のどちらを優先するのかを明確にすることで、デザインの方向性を客観的に決定できます。
Q6. デザイン性を重視すると、情報量が減ってしまいSEOに不利になりませんか?
- A6. その懸念は重要です。デザイン性を優先してテキスト情報を極端に減らすと、検索エンジンがページ内容を理解できず、SEO評価が下がる可能性があります 。優れたデザインは、情報量と見た目の美しさを両立させます。例えば、重要な情報はしっかりテキストで記述しつつ、アコーディオンメニューで情報を整理したり、図解を取り入れたりすることで、スッキリとした見た目と情報量を両立させることが可能です。