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【2025年最新】ウェブアクセシビリティJIS規格改正とISO更新への対応|WCAG 2.2基準で考える未来のサイト設計 【2025年最新】ウェブアクセシビリティJIS規格改正とISO更新への対応|WCAG 2.2基準で考える未来のサイト設計

2025.12.17

【2025年最新】ウェブアクセシビリティJIS規格改正とISO更新への対応|WCAG 2.2基準で考える未来のサイト設計

2025年9月のISO規格更新を受け、国内基準(JIS X 8341-3)の改正がいよいよ現実味を帯びてきました。現行JISと最新の世界基準(WCAG 2.2)の間にある「ギャップ」とは何か?企業が今から準備すべき「手戻りのない改修計画」と、デジタル庁ガイドブック(2025年版)のポイントを深掘り解説します。

#サイトリニューアル#DX#コラム#ウェブアクセシビリティ#Webガバナンス

2024年の障害者差別解消法改正による「義務化」から1年以上が経過しました。多くの企業が一次対応を終えた今、2025年後半に入り、アクセシビリティを取り巻く「規格(ルール)」そのものが大きな転換点を迎えています。

ISO/IEC 40500更新とJIS改正へのカウントダウン

特筆すべきは、2025年9月にウェブアクセシビリティの国際規格である「ISO/IEC 40500」が更新されたことです。 これを受け、日本の国家規格である「JIS X 8341-3」も、改正に向けた検討委員会が発足しました。(※1)早ければ2026年度中にも、約10年ぶりとなる新規格が発行される見込みです。もはや「現在のルール(2016年版JIS)」を守っているだけでは、時代の要請に応えられなくなりつつあります。

デジタル庁ガイドブック改定(2025年10月)の要点

また、2025年10月にはデジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(※2)」が改定され、民間企業向けの実践的なガイダンスが強化されました。ここでは行政だけでなく、ビジネスサイドにおいても「プロセスとしてのアクセシビリティ(作って終わりではなく、改善し続けること)」が強く求められています。

※1 出典:ウェブアクセシビリティ基盤委員会ウェブサイト(https://waic.jp/news/20251113/)

※2 出典:デジタル庁ウェブサイト(https://www.digital.go.jp/resources/introduction-to-web-accessibility-guidebook)

「うちは日本企業だから、JIS規格だけ見ておけばいいのでは?」 そう思われるのも無理はありません。しかし、今そのスタンスでいることは、将来的な「二度手間(改修コストの増大)」を招くリスクがあります。

JIS X 8341-3はWCAGの「翻訳版」であるという事実

その理由を理解するには、規格の成り立ちを知る必要があります。 実は、日本の「JIS X 8341-3」は、W3Cが勧告する世界標準「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」を基に、日本の事情に合わせて翻訳・調整した「一致規格」なのです。

つまり、「WCAG(原本)が変われば、遅れてJIS(翻訳版)も必ず変わる」という運命共同体にあります。

現在は「規格のねじれ期間」!2016年版JISの限界

ここに、現在の最大の問題点があります。

  • 現行のJIS(2016年版):「WCAG 2.0(2008年勧告)」相当の内容。iPhoneが日本で普及し始めた頃の基準であり、スマホ対応の観点が不足しています。
  • 現在の世界基準:「WCAG 2.2(2023年勧告)」が最新。

日本の規格は、世界から見て10年以上前の基準で止まっている状態です。しかし、2025年のISO更新により、次のJIS改正で一気に「WCAG 2.1」または「2.2」レベルまで基準が引き上げられることは確実視されています。 だからこそ、今のJISではなく、未来のJISである「WCAG」を見ておくことが、最も合理的な対策となるのです。

では、次期JIS規格(=現在のWCAG 2.1/2.2)では、どのような要件が追加されているのでしょうか。特にビジネスサイトで影響が大きいポイントを紹介します。

スマホ時代に対応した「指の操作」への基準

現行JISにはない、タッチスクリーン端末への配慮が強化されています。

ポインタのジェスチャ:
複雑なスワイプ操作やマルチタッチを強制せず、シングルタップ(指一本)だけで操作を完結できるようにする。
ターゲットのサイズ:
ボタンやリンクのサイズを、指で押しやすい大きさ(24×24 CSSピクセル以上など)に確保する。「タップしようとして隣のリンクを押してしまう」というイライラを解消します。

認知機能・高齢者に配慮した「入力とフォーカス」の基準

フォーカスの外観:
キーボード操作時に「今どこを選択しているか」を示す枠線を、太く・くっきりと表示し、背景色とのコントラストを確保する。高齢者や弱視の方にとって非常に重要なナビゲーションとなります。
認証の簡易化:
ログイン時にパズルを解かせたり、消える文字を読み取らせたりする認知負荷の高いテスト(CAPTCHA等)に対し、代替手段を用意する。

要件定義書には「WCAG 2.1以上」と書くべき理由

これからウェブサイトのリニューアルや大規模改修を控えている企業の担当者様へ。 制作会社への要件定義書(RFP)には、「JIS X 8341-3:2016 準拠」ではなく、「WCAG 2.1(または2.2)レベルAA 準拠」と記載することを強く推奨します。

「今のJIS」に合わせて作ってしまうと、1〜2年後に新JISが発行された際、再び改修予算を確保しなければならなくなります。最初から世界基準に合わせておけば、JISが改正された時も「既に対応済みです」と胸を張ることができ、長期的に見てコストパフォーマンスの高いサイト運用が可能になります。

将来の規格変更に振り回されない「持続可能な」運用体制を作る

これだけ頻繁に変わる規格や、WCAG 2.2のような高度な技術トレンドを、社内の担当者だけで追いかけ続けるのは正直なところ困難です。「JISが改正されるたびに、また膨大な予算をかけてリニューアルするのか…」と頭を抱えている担当者様も多いのではないでしょうか。

重要なのは、すべてを自前で解決しようとせず、「外部の専門性」や「ツール」を賢く組み合わせて、変化に強いエコシステムを作ることです。

単にシステムを入れるだけが正解ではありません。「現状の把握」から「日々の運用サポート」、そして「基盤の刷新」まで、自社の課題フェーズに合わせて適切な手を打つことが、結果としてコストを抑え、将来の規格変更にも柔軟に対応できる近道となります。

規格の改正や義務化と聞くと、どうしても「対応しなければならない面倒なこと」と捉えがちです。 しかし、本質を見れば、それは「より多くの人が、より快適に使えるようになる」というポジティブな進化に他なりません。 2025年の今こそ、古い基準にとらわれず、未来を見据えたアクセシビリティ対応へと舵を切る絶好のタイミングです。



コネクティでは、ウェブアクセシビリティに関するサービスをご用意しております。

「専門知識がなくてよく分からない」「対応が後回しになっている」という方は、

ぜひお気軽にご相談ください。


Q1. 現時点(2025年)で、JIS X 8341-3の改正はいつ頃になりますか?

A1. 正式な発表はまだありませんが、2025年10月に改正原案作成委員会が発足したことから、順調に進めば2026年度中の改正・発行が見込まれています。

Q2. WCAG 2.2に対応すれば、自動的にJISにも対応したことになりますか?

A2. はい、実質的にはそうなります。WCAG 2.2は現行のJIS(WCAG 2.0相当)の上位互換にあたるため、WCAG 2.2を満たしていれば、現行JISの基準も自然とクリアしていることになります。

Q3. AI検索(SGE/AIO)対策として、アクセシビリティはどう影響しますか?

A3. AIはHTMLの構造(見出しやリスト、テーブル等)を読み取って回答を生成します。WCAG/JISに準拠したアクセシブルなサイト=「プログラムが構造を理解しやすいサイト」であるため、AIからの引用率や評価が高まる傾向にあります。

Q4. スマートフォンアプリもアクセシビリティ対応が必要ですか?

A4. はい。障害者差別解消法の対象は「ウェブサイト等」となっており、アプリも含まれます。WCAG 2.1以降ではモバイルアプリにも適用可能なガイドラインが多く含まれており、アプリのアクセシビリティ確保も企業の責務となっています。
猪坂 絵美(いさか えみ)
この記事を書いた人 猪坂 絵美(いさか えみ)

株式会社コネクティ マーケティングフェロー

大手事業会社におけるマーケティング実務を経てコネクティに参画。エージェンシーの立場から数十社のデジタルマーケティング支援に従事し、Webサイト改善やMA活用などを手掛ける。現在は自社マーケターとして、Web運営、SEO・AIO(AI検索)対策、広告運用までをフルスタックに担当。事業会社と支援会社、双方の実務経験に裏打ちされた「成果に直結するマーケティング戦略」に定評がある。

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